走行中やアイドリング時に排気管から水が滴り落ちる最大の理由は、化学反応におけるエンジン完全燃焼と水蒸気の発生プロセスにあります。自動車のガソリンは炭化水素(CとHの化合物)で構成されており、シリンダー内で吸入空気中の酸素(O2)と理想的な空燃比で混合・燃焼すると、化学反応によって二酸化炭素(CO2)とともに大量の水(H2O=水蒸気)が生成されます。燃料1リットルを消費した際、理論上はおよそ同等量(約1リットル)の水蒸気が排出ガス中に生まれる計算です。
発生した水蒸気は、数百度の高温排気ガスとともにエキゾーストマニホールドから触媒を通り、マフラー(消音器)へと流れていきます。このとき、三元触媒が適正な活性温度(約300℃〜800℃)に達していると、有害物質である一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)が無害な水蒸気と二酸化炭素へと高度に浄化されます。つまり、「排気管から水蒸気が生まれ、水滴となって排出される」こと自体は、燃焼効率と環境対策用触媒がどちらも正常に機能している決定的な証拠なのです。
特にアイドリング中のマフラー水滴排出が目立つのは、排気管全体が外気温で冷やされている条件下です。高温の水蒸気が冷たいマフラー内部(サイレンサーやテールパイプ)の金属壁に触れると、急速に熱を奪われて気体から液体へと相転移(凝縮)し、水滴へと変化します。冬場や早朝の始動直後に水滴が滴りやすいのはこのためです。その後、発進や加速でアクセルを踏み込むと、排気圧によってサイレンサー底部に溜まっていた凝縮水が一気に押し出され、後方から見ると「勢いよく水が噴き出した」ように見えます。
したがって、排出された液体が無色透明で無臭であり、エンジンが温まるにつれて過剰な水滴や排気の白みが落ち着くのであれば、車両に何ら異常はありません。むしろエンジンコンディションが優れている証拠と言えます。