小学校高学年から中学生にかけて、発症率が約5%から約10%へと倍増する起立性調節障害。体が急速に大人へと変化する第二次性徴期において、なぜこれほどまでに多くの生徒が朝の起床困難に苦しむことになるのか、その理由は身体の成長スピードと神経系の成熟度のアンバランスにあります。
人間が横になった状態から立ち上がるとき、重力によって血液は下半身へ移動しようとします。健康な体内では、交感神経が瞬時に指令を出し、下半身の血管を収縮させて血圧を維持し、脳への血流を一定に保ちます。ところが思春期では、骨格や内臓が急激に成長する一方で、自律神経の調整機能の発達が追いつきません。その結果、起立時に血管の収縮が間に合わず、脳血流が一時的に著しく低下してしまうのです。
この脳虚血状態が引き起こすのが、激しい立ちくらみ、めまい、激しい頭痛、そして身体に鉛が詰まったような全身倦怠感です。午前中は副交感神経から交感神経への切り替えが極端に遅れる生体リズムのズレが生じており、本人が「起きたい」「学校へ行かなければ」と強く願っていても、肉体そのものが覚醒レベルに達していません。医学的に見れば、低血圧と血流不全による一種の脳貧血状態であり、気合いで起き上がれる性質のものではないという事実が臨床現場から強く指摘されています。