『山谷ブルース』の歌詞は、労働者の日常と拭いきれない過去の後悔を鮮烈に描写しています。「今日の仕事はつらかった あとは焼酎をあおるだけ」という歌い出しから始まるフレーズは、日当をその日の酒代に替え、刹那的に生きる労働者の哀感をありのままに捉えています。
歌詞の中盤に登場する「こんな男に誰がした」という嘆きや、故郷に残してきた家族や恋人を想うくだりは、単なる社会告発にとどまらず、普遍的な人間の弱さと孤独を浮き彫りにしています。当時、反体制運動に沸く学生運動世代だけでなく、実際に泥にまみれて働く労働者たち自身がこの歌を口ずさんだ理由は、上から目線の同情ではなく、当事者と同じ目線で流した汗と涙が刻まれていたからに他なりません。
音楽的構造に目を向けると、ギターコード進行は極めてシンプルです。基本はAm(ラ・ド・ミ)、Dm(レ・ファ・ラ)、E7(ミ・ソ#・シ・レ)を基調とする哀愁の短調3コード。アコースティックギター1本のフィンガーピッキングやストロークで力強く奏でられるこの構成は、誰もがすぐに弾き語りできる親しみやすさを持ちながら、ドロ臭いブルースの情念を最大限に引き出す設計となっています。