計器観測が始まって以来、人類が記録した最強の地震は、1960年5月22日に発生した「チリ地震(バルディビア地震)」です。その規模はマグニチュード9.5(Mw)という、前例のない数値を記録しました。
震源域となったのは南米チリ沖の沈み込み帯です。ナスカプレートが南米プレートの下に沈み込む境界で、南北およそ1000km、幅約200kmにわたる巨大な断層が一気に破壊されました。断層のすべり量は最大で数十メートルに達したとされ、放出されたエネルギーは、2011年の東日本大震災(M9.0)の約5.6倍、阪神・淡路大震災(M7.3)の実に約2800倍に相当します。
現地チリでは激しい揺れが10分以上も継続し、海岸線一帯の地盤が最大2メートル以上も沈降。壊滅的な地割れや地滑り、そして最大25メートルに達する大津波が街を押し流しました。当時の被災者の手記や現地報道の記録には、「大地が生き物のようにうねり、立っていることすらできず地面に這いつくばるしかなかった」「海が一瞬で消え去ったかと思うと、黒い壁のような波が押し寄せてきた」という壮絶な証言が残されています。