木村拓哉と松たか子の共演史を語る上で欠かせないのが、1990年代後半から2000年にかけて放送されたフジテレビ月9枠の3大傑作です。それぞれ異なる時代背景とキャラクター造形の中で、2人は見事な変遷を遂げていきました。
1. 『ロングバケーション』(1996年)|高嶺の花の後輩と冴えないピアニスト
当時18歳だった松たか子が演じたのは、木村拓哉演じる主人公・瀬名秀俊が憧れる音楽大学の後輩・奥澤涼子でした。涼子はお嬢様育ちで純粋、どこか掴みどころのない儚さを纏っており、瀬名の不器用な恋情を優しく受け止めつつも、竹野内豊演じる葉山真二へと心を寄せていきます。
主演の山口智子と木村拓哉の掛け合いがドラマの主軸でありながら、松たか子が見せた清楚で気品ある佇まいは鮮烈なインパクトを残しました。木村拓哉の繊細な表情を引き出す触媒として、若き日の松たか子は完璧な存在感を放っていたのです。
2. 『ラブジェネレーション』(1997年)|ぶつかり合いから生まれる究極の恋愛感情
『ロンバケ』の翌年、2人は満を持してW主演として再集結します。木村拓哉演じる広告代理店のクリエイター・片桐哲平と、松たか子演じる型破りで真っ直ぐなOL・上杉理子。前作の清楚なイメージを大きく覆し、ボブヘアにカジュアルな装いで哲平に体当たりしていく理子のキャラクターは、当時の女性層から絶大な共感を呼びました。
象徴的なアイテムとなった「クリスタルガラスのリンゴ」や、大平原でのロケなど、大滝詠一の主題歌『幸せな結末』とともに描かれた2人の恋模様は、平成トレンディドラマの到達点として今なお語り継がれています。
3. 『HERO』(2001年〜)|恋愛を超越した唯一無二の検事・事務官バディ
そして2人のパートナーシップの頂点となったのが『HERO』です。中卒の元不良で通販好き、茶色のダウンジャケットを着こなす型破りな検事・久利生公平。彼に振り回されながらも次第に感化され、強い正義感で事件に向き合っていく生真面目な検察事務官・雨宮舞子。
本作の画期的だった点は、安易な恋愛関係に発展させず、「仕事への誇りと揺るぎない信頼」を軸に据えたことです。久利生が雨宮の背中を押し、雨宮が久利生のブレーキ役となる。2人の丁々発止のやり取りは、テレビドラマにおける「理想の男女バディ」の完成形として日本中に定着しました。