事件をめぐっては、インターネット掲示板やSNS上で「遺体が見つからないのに、なぜ殺人と断定できるのか」「別の人物による連れ去りではないか」といった憶測が散見されます。しかし、これらの疑問は警察捜査の緻密なパズルを前に完全に論破されています。
誤解1:遺体がないため「状況証拠のみ」で無罪の余地がある?
フランス法において、有罪判決に必要なのは「物質的な死体」そのものではなく、裁判官および陪審員が抱く確固たる心証(intime conviction)です。本件では、黒崎さんの部屋から聞こえた悲鳴、犯行前後のセペダの不審な資材購入、レンタカーの走行履歴、携帯電話基地局の接続データ、さらに黒崎さんの口座やパスポートが事件直後から一切使用されていない事実など、数百に及ぶ間接証拠が「セペダによる殺害」という単一の結論を完全に包囲していました。
誤解2:遺体は川に流されて海に到達した?
捜査当局は、セペダが借りたルノー・クリオの走行記録から、ブザンソン南部のショウの森(Forêt de Chaux)周辺に数日間にわたり長時間滞在していた事実を特定しています。警察犬、ソナー、ヘリコプター、ダイバー部隊を総動員し、ドゥー川や広大な森林地帯を徹底捜索しましたが、広大かつ険しい自然環境と、犯行から捜索開始までに時間が空いたことが災いし、発見には至りませんでした。セペダは現場の地理に不案内でありながら、人気のない深い森の奥深くを選んで遺棄したと見られています。