では、現場でこの難所を前にしたとき、どのような渡り方を実践すべきなのでしょうか。結論から言えば、「直立して歩いて渡る」行為は、一部の上級者が無風・乾燥時に行う例外的な動作であり、一般登山者は絶対に真似をしてはなりません。
最も安全かつ現実的な通過方法は、岩の背に馬乗りになる「またがり(跨ぎ)」スタイルです。具体的には以下の手順を徹底します。
まず、岩稜の取り付き地点でリュックサックのチェストストラップとウエストベルトを締め直し、荷物が左右に揺れないよう身体に密着させます。ストックなどの手持ち装備は完全にザック内部へ収納し、両手を自由にしておかなければなりません。
尾根の突入後は腰を落とし、岩を股下に挟むようにして座り込みます。両手を前方の安定した岩の凹凸(ホールド)に置き、手のひらとお尻、両足の内太ももを使って摩擦を効かせながら、尺取虫のように前進します。重心を極限まで低く保つことで、突然の突風に対する耐性が劇的に向上し、足を踏み外すリスクを最小限に抑え込むことが可能です。
見栄や羞恥心から四つん這いや中腰で進もうとする登山者が見られますが、四つん這いは突風を受けた際に風圧を受ける面積が広がり、横転の危険が生じます。「みっともなくても跨いで進む」ことこそが、登山ガイドやベテランが口を揃える現場の鉄則です。