猿の頭部移植実験の真相とは?ロバート・ホワイト博士が遺した禁忌の全貌

猿の頭部移植実験の真相とは?ロバート・ホワイト博士が遺した禁忌の全貌

猿の頭部移植実験の真相とは?ロバート・ホワイト博士が遺した禁忌の全貌について知っておくべき ポイントを厳選して解説いたします。

実験の成功が学術発表されるや否や、世界中のメディアは「首のすげ替え実験」「生きた生首の移植」とセンセーショナルに報じました。医学界の一部がその微小血管手術の精緻さに息を呑む一方、一般社会とメディアからはかつてない規模の激しい非難がホワイト博士個人へと集中することになります。

最大の争点となったのは、動物に対する残酷性と生命尊厳の蹂躙でした。意識を取り戻したサルは、頭部こそ正常に機能していたものの、脊髄が完全に切断されているため、首から下を1ミリも動かすことができない四肢麻痺状態にありました。痛みを感じることも、自力で身じろぎすることもできず、ただ見知らぬ他者の体の上に固定されたまま、恐怖と混乱の中で周囲を見つめるしかなかったのです。動物愛護運動の黎明期にあって、著名な活動家たちや結成間もないPETA(動物の倫理的処遇を求める人々の会)などは、ホワイト博士を「現代のフランケンシュタイン博士」「拷問者」と名指しで攻撃。博士の自宅には連日のように殺害予告や脅迫状が届き、学会場にはプラカードを掲げた抗議集団が押し寄せました。

さらに、宗教界・思想界からも深い疑義が呈されました。西洋思想において「脳」は単なる臓器ではなく、人格、理性、ひいては「魂の座」と見なされてきました。他人の体に他人の脳を移植する行為は、「人間とは何か」「個の同一性(アイデンティティ)はどこに宿るのか」という哲学の根幹を揺るがす禁忌(タブー)に触れたのです。

田中 結衣
著者

田中 結衣

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。