ヤクザの語源に関しては「893=おいちょかぶ」が定説として広く受け入れられていますが、日本語学や民俗芸能史の研究においては、複数の別の有力説や補足的な視点が提示されています。
その一つが「役座(やくざ)説」です。歌舞伎や大衆演劇の興行において、主役や重要な脇役ではなく、通行人や名もない端役を務める階層のことを「役座」と呼んでいました。そこから「社会の本流ではない端くれの者」「主要な役目を持たない者」を意味するようになったという見解です。
さらに、災いや不吉を意味する「厄(やく)」の文字をあてはめた「厄座(やくざ)説」や、物事が傾いて本来の用をなさないことを指す古語「やく(無益・無駄)」に接尾語がついたとする言語学的アプローチも存在します。
歴史的な事実関係を照らし合わせると、これらの言葉が持つ「役に立たない」「規範から外れている」というニュアンスが、江戸中期の博徒たちの間で賭博用語の「八・九・三」と音韻的に一致し、語呂合わせの形で融合・強化されて定着していったと考えるのが最も自然な帰結です。