台湾の旅において最大のハイライトとなるのが食文化です。中国八大料理の系譜を継ぎながら、日本統治時代の食習慣や南方系のエッセンスが融合した台湾料理は、日本人の味覚に驚くほど自然に馴染みます。
薄皮小籠包の最高峰として知られる「鼎泰豊(ディンタイフォン)」では、皮の重さ5g、具材16g、18のひだという極めて精密な職人技が徹底されています。現地で実際に食してみると、生姜と黒酢を添えた一口目から濃厚な旨味が広がり、世界中で行列を作る理由に誰もが納得させられます。一方で、地元民が足繁く通う路地裏の「明月湯包」や「杭州小籠湯包」では、よりワイルドで豚肉の甘みが際立つ一皿に出合えます。
庶民派グルメの代表格である魯肉飯(ルーローハン)も外せません。台北を中心とする北部では角切り豚バラ肉に五香粉や八角を効かせた深みのある味わいが好まれるのに対し、台南をはじめとする南部では「肉燥飯(バーソーペン)」と呼ばれ、脂身を抑えた赤身中心のそぼろ肉に甘みの強い醤油タレが使われる傾向があります。一杯わずか40〜60台湾元(約200〜300円)前後で味わえる手軽さも、旅人を惹きつけてやまない魅力です。
そして夕暮れとともに始まる夜市は、まさに食のエンターテインメント空間です。台北最大の規模を誇る「士林夜市」では、顔の大きさほどもある巨大フライドチキン「大鶏排(ダージーパイ)」や、胡椒のスパイスが効いた「胡椒餅」が焼き上がる香ばしい煙が漂います。近年は美食家が集まる「寧夏夜市」や「饒河街夜市」など、ミシュランのビブグルマンに選出される屋台を多数擁する夜市にも熱烈な視線が注がれています。