プロのスカウト陣が一斉にスピードガンを掲げ、息をのんだ。バッターボックスの打者が思わず腰を引くほどの切れ味を誇る、ストレートの重圧。今日登板した最注目株のサウスポーは、自己最速を更新する153キロを叩き出し、敵陣の強力打線を完全に沈黙させた。
ただ速いだけではない。追い込んでからの低いスライダーのキレが異次元だ。「去年までの自分とは違う」と語っていた男の言葉に嘘はなかった。冬場の厳しい走り込みで培われた下半身の粘りが、終盤8回を迎えても一切球威を落とさせない。スカウトの一人は「今すぐプロのローテーションに入ってもおかしくないレベル」と唸り、ノートに激しくペンを走らせていた。