インターネットの検索窓や知恵袋などで「コッカースパニエル 黒」と調べると、関連語句に「性格がきつい」「飼いにくい」といった不穏なワードが浮上します。この噂の背景には、犬種が辿ってきた歴史的経緯と、人間の認知心理学的な錯覚という2つの明確な理由が存在します。
歴史的な背景として、かつてイングリッシュコッカースパニエルの一部単色毛(ソリッドカラー)において、突発的に攻撃性を示す「激怒症候群(レイジ症候群)」が遺伝疾患として学会で報告された時代がありました。主にレッドやゴールドの毛色で議論された問題でしたが、ソリッド全般、ひいてはブラックの個体に対しても「単色=気性が荒いのではないか」という先入観が一部に定着してしまった経緯があります。現在では優良な専門ブリーダーによる厳格な血統管理と遺伝的淘汰が進められており、血統に起因する異常な攻撃性はほぼ排除されています。
もうひとつの要因は、動物行動心理学で言及される「ブラック・ドッグ・シンドローム(黒犬症候群)」です。黒一色の被毛を持つ犬は、顔の陰影や瞳の位置、口元の動きが遠目から識別しづらく、初対面の人間に「何を考えているのかわからない」「威圧感がある」という警戒心を無意識に抱かせやすい傾向があります。実際のコッカースパニエルの黒の性格は、むしろ飼い主に対して一途で甘えん坊、人間とのスキンシップを何よりも好む非常に温厚な気質を持っています。