本作が放送された2011年は、東日本大震災の発生からわずか数ヶ月後という、日本全体が深い喪失感とトラウマに包まれていた時期でした。ゴールデンタイムの連続ドラマとしては異例とも言える重苦しいテーマに対し、当初は視聴を躊躇する声も少なくありませんでした。しかし、回を重ねるごとにSNSやドラマファンのコミュニティを中心に熱烈な支持が広がり、最終回に向けて異例の熱狂を生み出しました。
名作と評される最大の要因は、坂元裕二による徹底したディテール描写にあります。事件によって家庭が崩壊し、時が止まってしまった深見家と、社会からの激しいバッシングと誹謗中傷に晒され、名前を変えながら逃亡者のように息を潜めて生きる遠山(旧姓・三崎)家。双方が抱える「罪と罰」「喪失と孤立」を、単なる善悪の二元論に落とし込むことなく、日常のささやかな会話や食事の風景を通して浮き彫りにしました。
また、劇伴を彩る辻井伸行の哀切漂うピアノ旋律と、エンディングで静かに流れる小田和正の主題歌「東京の空」が、物語の過酷さを包み込む圧倒的な余韻を演出しました。過剰な演出や劇的なカタルシスを排し、人間の弱さと尊厳にどこまでも寄り添った誠実な作劇姿勢こそが、現在に至るまで評価が色褪せない根本的な理由です。