スティギオメデューサが最初に採取されたのは1899年のことですが、正式に新種記載されたのは1910年のことです。それから1世紀以上の歳月が流れた現在でも、全世界での公式な目撃記録はわずか130件前後にとどまります。世界中の海に広く生息していると推測されながら、なぜこれほどまでに目撃例が少ないのでしょうか。
最大の理由は、彼らが好む生息深度が生身の人間が立ち入れない「深海1000m前後のミッドナイトゾーン」であること、そして網によるトロール調査を行うと、水分を極めて多く含むゲル状の柔らかい体が自身の自重と水圧差でズタズタに崩壊してしまうためです。
特に世界へ大きな衝撃を与えたのが、南極の深海で撮影された目撃映像です。通常は水深1,000メートル以深に潜むはずのスティギオメデューサが、南極半島周辺では水深100メートル前後の浅い海層に出現しました。これは南極海特有の「深層水湧昇」と、極寒環境による水温・密度の均一化(極地性表層出現)がもたらした現象と考えられており、学術界でも極めて貴重なデータとして記録されています。