東京の邸宅街が都心アクセスや利便性との調和を図るのに対し、徹底して「隔絶された理想郷」を追求したのが、兵庫県芦屋市の山の手に位置する六麓荘町です。1928年に大阪の豪商たちによって開発されたこの地は、日本で初めて完全無電柱化を実施した住宅街としても知られています。
町内を走る道路は広々としており、通過交通をシャットアウトする構造が採られています。電線が一切地中に埋設されているため、視界を遮るものがなく、美しく剪定された黒松越しに瀬戸内海を一望できるパノラマビューが広がります。
特筆すべきは、町内全域に漂う静寂の深さです。路線バスやタクシーを除く商用車の出入りは制限され、深夜や早朝の騒音は厳禁。住まいを構えること自体がひとつの文化的なステータスであり、単なる富の誇示を超えた美意識の共有が、半世紀以上にわたって六麓荘町を関西の頂点に留まらせています。