「同じような公的施設なのに、なぜここまで扱いが違うのか」。現場の相談窓口で家族から最も多く寄せられる疑問です。厚生労働省の規定において、老健(介護老人保健施設)は「居宅における生活への復帰を目指す中間施設」と定義されています。主眼はあくまでリハビリテーション目的の機能回復と在宅復帰であり、病院と自宅を繋ぐ架け橋としての性格を持ちます。
対照的に、特養(特別養護老人ホーム=介護老人福祉施設)は「常に介護が必要で自宅での生活が困難な高齢者が生活する場」です。一度入所すれば、自立して退所できるケースを除き、最期まで暮らし続ける「終の棲家」として設計されています。
この目的の違いは、日々の生活環境や人員配置に直結します。顕著な例が医療ケアと医師常駐の違いです。老健では入所者100人に対して1人以上の専任医師の常駐が法律で義務付けられており、日常的な投薬管理や軽度の体調変化への迅速な治療が施設内で完結します。一方、特養における医師は「配置医師(嘱託医)」であり、週に数回来る非常勤が一般的。夜間や休日の急変時には、オンコール対応の看護師が嘱託医や救急車を手配する形を取るため、高度な医療処置が必要な状態では受け入れが困難になる傾向があります。
さらに家族を悩ませるのが入居期間3ヶ月の壁です。老健では入所後およそ3カ月ごとに多職種による「入所継続検討会議」が開かれ、リハビリの進捗や在宅復帰の可否が厳密に判定されます。状態が安定したと見なされれば退所を促されるため、特養のように「入れたからこれで一安心」とはいかないのが実情です。