日本のリスナーが初めてトロットを聴いた際、多くの人が「日本の演歌にそっくりだ」と感じる。確かに、日本の演歌と韓国歌謡の代表格であるトロットには、明治から大正、昭和初期にかけての歴史的・文化的交流の中で育まれた共通の音楽的ルーツが存在する。哀切を帯びた小節(こぶし)や、故郷や愛する人を想う歌詞の情念は、双方のジャンルに深く刻まれている。
しかし、決定的な違いはその「リズムとグルーヴ」にある。演歌がしっとりとしたタメや日本舞踊的な「静」の感覚を重視するのに対し、トロットの根本を支えるのは躍動的な「2拍子」のリズムだ。狐歩(フォックストロット)に由来すると言われるダンスミュージックとしての遺伝子が、身体を揺さぶるダンスビートやEDM、ロック、ハイテンポなポップスとの親和性を生み出している。しんみりと聴き入る演歌に対し、観客が立ち上がって合唱し、ペンライトを振って盛り上がるライブ体験こそが、このジャンルを決定づける特徴なのだ。