この事件は単なる研究不正にとどまらず、日本の科学界に計り知れない悲劇と痛傷を残しました。小保方氏のメンターであり、発生生物学の世界的権威としてノーベル賞候補とも目されていた笹井芳樹副センター長が、2014年8月に自ら命を絶つという最悪の事態が発生したのです。理研の組織マネジメント、巨額の予算獲得を巡るPR戦略の暴走、メディアの過熱報道に対する批判が渦巻きました。
理研を退職し沈黙を守っていた小保方氏は、2016年1月に講談社から手記『あの日』を上梓します。発売直後からベストセラーとなった同書で、彼女は自らの視点から研究室内の力関係や、共同研究者であった若山照彦山梨大学教授(当時)とのやり取り、バカンティ教授との研究経緯を赤裸々に綴りました。
手記の中で小保方氏は、自身の未熟さを認めつつも、意図的な捏造を否定し、ES細胞混入の責任が自らのみに帰せられたことへの強い違和感を主張しました。読者やネット上では「組織にトカゲの尻尾切りにされた被害者」と同情する声が上がる一方、「科学的な反論になっていない情緒的な弁明本に過ぎない」と厳しい指摘が相次ぎ、評価は真っ二つに割れました。