何年も育てて幹が茶色く硬化した株について、「木みたいになった部分から増やせないか」という相談が頻繁に寄せられます。結論から言えば、ローズマリーの木質化した枝を増やす方法として通常の挿し木を用いるのは得策ではありません。細胞の分裂活性が著しく低下しており、発根までに数ヶ月を要するか、途中で力尽きてしまう確率が極めて高いためです。
そこで真価を発揮するのが、古くから伝わる伝統技法「茎伏せ(圧条法)」です。ローズマリーの茎伏せのやり方は驚くほど合理的です。親株の根元近くから伸びている低めの枝を選び、地面に届く部分の樹皮をカッターで浅く削って形成層を露出させます。その部分を土に埋めてU字ピンや小石で固定し、先端の葉が出ている部分だけを地上部へ上向きに立ち上がらせます。
この手法の最大の利点は、親株の根から水分と養分の供給を受け続けながら、傷をつけた部分からじっくりと発根を促せる点にあります。水切れによる枯死リスクが原理的に存在しないため、木質化が進んだ株であってもほぼ確実に新しい苗を分離・独立させることが可能です。