一般的に「子泣きじじい」として広く認知されている怪異ですが、民俗学的な一次資料における子泣き爺の正体は、人里離れた深山幽谷に潜む危険な妖怪です。
その発祥地は徳島県三好市(旧三好郡三名村字平)の山間部とされています。民俗学者・柳田國男が著した『妖怪談義』(1956年、修道社)などの記録によると、老人の姿をしながら山道で「オギャア、オギャア」と赤ん坊そっくりの産声をあげて通行人を待ち受けます。道行く人が「こんな山奥に赤ん坊が捨てられている」と不憫に思い、抱き上げてあやすと、その重さが次第に増していき、最終的には五十貫(約187.5kg)から数百キロ相当の質量となってしがみつき、抱いた人間を逃げられないまま圧死させてしまうという凄惨な子泣きじじいの伝承が残されています。
また、四国地方には類似の怪異が複数報告されています。高知県高岡郡や幡多郡に伝わる「ごぎゃ泣き(ごぎゃなき)」は、夜道で赤ん坊の姿で現れて足にまとわりつく怪異ですが、履いている草履を脱ぎ捨てれば逃げられるといった対処法が存在します。これに対し、徳島の子泣き爺は一度抱き上げると腕から離れず、自力での脱出が極めて困難である点が際立った特徴です。