厚生労働省や各地の労働基準監督署、総合労働相談コーナーに寄せられる相談のなかでも、退職の意思表示の形態をめぐる齟齬は頻出案件となっています。
「転職活動が難航したため、一旦退職を取り下げたい」と考えた際、提出していた書類が「退職届」であった場合、使用者側が同意しない限り撤回は法的に成立しません。過去の最高裁判所判例(白石営林署事件など)においても、労働者の解約告知が相手方に到達した後は、相手方の同意なしに一方的に撤回することは信義則上許されないと判示されています。
ネット上のコミュニティや相談プラットフォームでも、「退職願のつもりで退職届のテンプレートを使って提出してしまい、慰留されることなく即座に処理されて後悔した」「口頭で引き止められたので安心していたら、人事上は退職届到達として粛々と進められていた」というリアルな体験談が散見されます。
確実に退職する決意が固まっていない場合や、条件面での交渉余地を残したい場合は、安易に「退職届」を提出してはなりません。意思表明の第一歩は必ず「口頭での相談」もしくは「退職願」からスタートするのがリスクヘッジの鉄則です。