豊洲市場の仲卸売場で40年以上のキャリアを持つベテランや、関東圏で多店舗展開する食品スーパーの鮮魚バイヤーへの聞き取り取材から、一般にはあまり知られていない「売り場の舞台裏」と「失敗しない個体識別法」が見えてきました。
「スーパーの照明は赤みを鮮やかに見せる特殊な蛍光灯(演色性LED)が使われているケースが多い。パックを持ち上げて、通路側の自然光や白色光の下で色味を確認するのが最初の防衛策だ」と鮮魚バイヤーは語ります。消費者が最も騙されやすい3つのポイントを整理しました。
1. ドリップ(肉汁流出)の「色」と「量」
トレーの底に敷かれた吸水マットが赤く染まっているものは、浸透圧の崩壊と細胞破壊が進み、イノシン酸などの旨味成分が流れ出てしまっています。ただし、無色透明のわずかな水分であれば、適切な冷温管理下で脂が浮き出ているサインである場合もあります。「赤く濁ったドリップ」が溜まっているパックは避けるのが鉄則です。
2. サク・切り身における「筋(スジ)の走り方」と「血合い」
刺身用サクを選ぶ際、マグロやブリでは血合い(暗赤色肉)の色調を注視してください。空気に触れて時間が経過すると、ミオグロビンが酸化して黒褐色に変色します。鮮やかな深紅から鮮紅色を保っているものを選びます。また、切り身の断面に虹色の光沢が出ていることがありますが、これは筋肉組織の光屈折によるもので腐敗ではありません。しかし、表面が乾燥してシワが寄っているものは鮮度劣化の明白な証拠です。
3. 丸魚(一尾魚)の目利き:目の濁りよりも「エラと尾の張り」
「目が澄んでいる魚が新鮮」というのは基礎知識ですが、プロが見るのはそこだけではありません。氷水に長時間浸かっていると、鮮度が良くても浸透圧で目が白濁することがあるからです。仲卸が最初に見るのは「尾柄部(しっぽの付け根)の太さと張り」、そして「腹部の硬さ」です。内臓から傷むため、鮮度が落ちた魚は腹がブヨブヨと軟化します。持ち上げた際に、頭から尾までピンと一直線に水平を保つ魚こそが、筋肉の引き締まった極上品です。