事件が表面化したのは、夏休み真っ只中の2014年8月9日早朝のことでした。出勤した飼育員が目にしたのは、無惨にも白い腹を上にして水面に漂う無数の魚たちでした。現場となったのは、水族館の屋外に設けられた庭園池およびふれあい水槽です。前日まで元気に泳ぎ回り、来館者が池のふちから直接餌を与えていた魚たちが、苦悶の果てに全滅に近い状態に追い込まれていました。
埼玉県や警察の初動鑑定によって、池の水から水道水基準の数百倍に達する高濃度の残留塩素が検出されました。何者かが深夜から未明の間に施設へ侵入し、プールの消毒用などに用いられる高濃度の固形塩素剤、あるいは強力な塩素系漂白剤を大量に流し込んだと断定されました。淡水魚のエラは極めて繊細であり、微量の次亜塩素酸であっても組織が瞬時に破壊され、激しい呼吸不全に陥ります。無言の生き物たちを襲った無差別な加害行為でした。
さらに現場を震撼させたのは、初回の事件からわずか9日後の8月18日未明における第2の犯行です。警戒を強めていた最中、屋根付きの屋外水槽に残されていた魚までもが再び塩素投入の被害に遭いました。特に、当館のシンボル的存在であり、20年近くにわたり飼育員の手で大切に育てられてきた大型個体を含む深刻なチョウザメ被害は、職員のみならず多くのファンを深い悲痛に突き落としました。