完成から年月が経過した現在も、マリーナベイサンズの構造健全性は寸分の狂いもなく維持されています。巨大な3棟のタワーが連なり、その頂上に長さ340メートル、重量数万トンに及ぶ巨大な空中庭園「サンズ・スカイパーク」が載る構造は、一見すると頭でっかちで不安定に見えますが、極めて高度な免震・制震思想が組み込まれています。
シンガポール自体は地震の活動帯から外れているものの、隣国インドネシアのスマトラ島沖などで発生する巨大地震の長周期地震動を想定した設計がなされています。頂上のスカイパークと3つのタワーの接続部には特注の「スライド伸縮継手(エキスパンション・ジョイント)」が設置されており、強風や地震でタワーが別々に揺れたとしても、揺れのエネルギーを逃がして屋上構造物が破損しない仕組みになっています。
実際にタワー内部へ足を踏み入れると、外観のダイナミックな傾きとは対照的に、室内環境は極めて快適で水平が完全に保たれています。エレベーターは傾斜に沿って斜めに昇降する特殊仕様(一部タワー)となっていますが、最新の制御システムにより揺れや傾きを感じることは一切ありません。世界中のセレブリティや宿泊客が絶景を楽しむインフィニティプールも、風や荷重による微細な撓み(たわみ)をコンピュータ制御で吸収し、水面が常に一定の美しさを保つよう設計されています。
【プロの結論】情報バイアスを見抜き建築の真価を愉しむ判断基準
ネット上に氾濫するセンセーショナルな言説(「倒壊寸前」「手抜き工事」)は、複雑な工学的事実を確認せずに発信された典型的な認知バイアスによるものです。マリーナベイサンズは、建築家モシェ・サフディの芸術性と、アラップ社の精密な構造計算、そして双竜建設の果敢な施工技術が結実した、21世紀を代表する構造工学の傑作です。
宿泊や観光を検討する際、以下のような基準で判断することをおすすめします。
- おすすめできる人:世界最高峰の近未来建築を体感したい人、地上200メートルのインフィニティプールからシンガポールの絶景を堪能したい人、最先端の工学技術が生み出した空間に滞在したい人。
- 慎重になるべき人:極度の高所恐怖症で足元が抜けるようなガラスファサードに強い恐怖を感じる人、落ち着いた低層のクラシックホテルや隠れ家的なリゾートステイのみを好む人。