通常の企業ブランディングであれば、自社の大切なIPイメージを損なう「失敗した着ぐるみ」や「悪意あるネットミーム」は、人知れず倉庫の奥に封印されるか、即座に改修されて歴史から抹消されるのが通例です。しかし、セガと原作元であるクリプトン・フューチャー・メディア、そしてフィギュア元のグッドスマイルカンパニーが取った行動は、業界の常識を根底から覆すものでした。
現場の関係者や当時の取材記録によると、セガの開発宣伝チームはネット上の狂乱を冷徹に分析。「不気味の谷で拒絶されているのではなく、ツッコミどころの多さによって異常な愛着を持たれている」と直感したのです。怒るどころか、この波に乗る決断を下しました。
事態が決定的に動いたのは2012年です。セガは公式生放送やプロモーション動画にミクダヨーを堂々と登壇させ、自虐とユーモアを交えた演出を連発。さらに2012年3月には「ミクダヨー」の文字商標を出願し、正式に権利保護を行いました。極め付きはグッドスマイルカンパニーによる「ねんどろいど ミクダヨー」の一般商品化です。「初音ミクのねんどろいどを模した着ぐるみを、再びねんどろいどとしてフィギュア化する」という狂気の逆輸入劇に、ホビー業界とファンコミュニティは拍手喝采を送りました。公式がファンの悪ノリを丸ごと抱きしめ、正規ライセンスキャラクターとして昇格させた歴史的瞬間でした。