一方、食文化の文脈において「正ちゃん」といえば、台東区浅草二丁目、ホッピー通り(煮込み通り)の角に佇む大衆酒場の代名詞だ。昭和26年創業。煮込み鍋から立ち上る甘辛い醤油と出汁の香りが、夕暮れ時の下町を包み込む。
名物の牛煮込みは、大鍋でじっくりと時間をかけて煮込まれた牛すじ肉と、飴色に染まった大ぶりの木綿豆腐が鎮座する圧巻のビジュアル。ひと口頬張れば、濃厚な旨味とトロトロの脂身が口いっぱいに広がり、すかさず流し込むホッピーや酎ハイの炭酸が喉を心地よく刺激する。チェーン展開の居酒屋では絶対に再現できない、70年以上継ぎ足されてきた鍋の年輪がそこにある。