街頭インタビューやWeb検索で頻繁に見受けられるのが、「麻布台ヒルズは東京タワーの高さを超えたのか」「公称330mは誇大ではないのか」という疑問です。国土交通省の認可資料および森ビルの公式プレスリリースを精査すると、驚くべき実態が浮き彫りになります。
まず、結論から明快に整理すると、「人が居住・勤務するビル(建築物)」というカテゴリーにおいて、麻布台ヒルズ森JPタワーは名実ともに日本一の高さを誇ります。2014年以来トップに君臨していた「あべのハルカス」(大阪市阿倍野区・地上300.0m)を約25m上回り、国内超高層ビルの頂点へ登り詰めました。
一方、メディアで広く報じられた「約330m」という大台の表記には、知られざる建築工学上の背景があります。設計上の厳密な数値は最高部高さ325.49m(軒高317.8m)であり、厳密には330mに約4.5m届いていません。では、なぜ「330m」という数字が独り歩きしたのでしょうか。森ビルの開発関係者への取材によると、起伏の激しい麻布台の地形(すり鉢状の傾斜地)における地盤面の取り方、あるいは海抜表示(海抜約350m規模)との混同、さらには報道各社がキリの良い概数として四捨五入したことが要因として挙げられます。
ここで避けて通れないのが「東京タワー(332.9m)との比較」です。現地で両者を見比べると、森JPタワーの方が圧倒的な体積とガラスカーテンウォールを持つため高く見えがちですが、工作物を含めた建造物全体の全高では依然として東京タワーが約7.4m高いのが動かしがたい事実です。ただし、ビル構造物として東京タワーの展望台(特別展望台249.9m)を遥かに凌ぐ高さにオフィスや超高級住宅が配置されている点こそ、現代都市工学の真骨頂と言えます。