なぜ同じ「筋胃」に対して二つの呼び名が並立したのだろうか。その根底には、東西で異なる命名の着眼点がある。
関東で主流の「砂肝」は、肝臓(レバー)に似た内臓器官であり、内部に砂を溜め込む構造に由来する。「砂が入っている内臓(肝)」という、部位の機能と見た目をダイレクトに表現した言葉だ。
これに対し、関西や九州で親しまれる「砂ずり」は、器官の中で砂と食べ物が「擦れ合う(すり潰される)」動作に由来する。消化のメカニズムそのものを描写した動的な命名と言える。方言研究者や日本料理の歴史を追う専門家も、この言語的アプローチの差を東西の文化的な気質を映す興味深い例として挙げる。