解熱鎮痛解毒剤の代表格であるアセトアミノフェンは、適量であれば安全性が極めて高く、子供から高齢者まで幅広く処方される。だが、その安心感がかえって死角を生む。学術的な観点、とりわけ肝毒性・薬物動態学の分析によれば、本成分の薬理挙動はアルコールの影響を極めて受けやすい。
通常、経口投与された有効成分は小腸から吸収され、門脈を経由して肝臓へと運ばれる。肝臓内で大部分はグルクロン酸抱合や硫酸抱合によって無害な形へと変換され、尿中へ排泄される仕組みだ。しかし、日常的な飲酒習慣がある人物や、過度のアルコールが体内にある状態では、チトクロームP450(CYP2E1)という酵素が過剰に誘導されている。この酵素の暴走が、毒性代謝物の産生を跳ね上げる。単なる胃荒れや二日酔いとは次元の異なる、分子レベルでの臓器損傷が密かに進行するのだ。