ゴラムという異形の怪物を語る上で、避けて通れないのが彼の本来の姿です。彼の本名は「スメアゴル」。かつて大河アンドゥインの河畔で穏やかに暮らしていた、ホビットの祖先にあたる小柄な水辺の民(ストゥア派のホビット)の若者でした。
彼の運命を決定づけた悲劇は、自らの誕生日に訪れます。親戚であり親友でもあったデアゴルと一緒に川へ釣りに出かけた際、デアゴルが偶然にも川底に沈んでいた「一つの指輪」を拾い上げました。太陽の光を浴びて妖しく黄金色に輝くそのリングを目にした瞬間、スメアゴルの精神はサウロンの邪悪な魔力に瞬時に侵食されます。「誕生日プレゼントとしてそれを寄越せ」と要求したスメアゴルは、拒絶したデアゴルの首を絞めて絞殺。あまりにも凄惨な強奪によって、指輪の新しい持ち主となったのです。
指輪を手に入れたスメアゴルは、透明になれる能力を悪用して盗みや盗聴を繰り返し、一族の秩序を激しく乱しました。やがて家族や仲間たちから忌み嫌われ、村を追放された彼は、喉を「ゴラム、ゴラム」と鳴らす奇妙な咳払いの癖から、蔑称として「ゴラム」と呼ばれるようになります。追いつめられた彼は太陽と月を憎み、冷たく暗い霧ふり山脈の奥底、地底の地底へと逃げ込みました。完全な孤独の中で数百年を過ごすうち、彼の骨格は歪み、皮膚は青白く変色し、私たちがスクリーンで目撃したあの怪異な姿へと変貌していったのです。