ドラッグストアのヘアケアコーナーに行けば、華やかなフローラルやフルーティーな香りをアピールするボトルが棚を埋め尽くしています。そうした中で、あえて「香りをつけない」選択をする消費者が確実に増えている背景には、深刻化する環境要因と肌トラブルの増加が存在します。
第一の要因は、生活環境における香りの過剰供給です。日本赤十字社や消費者庁の啓発資料でも言及されている通り、人工香料に含まれる揮発性有機化合物によって、頭痛、吐き気、集中力低下などを引き起こす「化学物質過敏症」や「香害」に悩む人口は潜在的に数百万人にのぼると推計されています。毎日の洗髪時に強い香りを嗅ぎ続けること自体が、嗅覚や自律神経にとって大きなストレス源となっているのです。
第二の要因は、頭皮のかゆみや皮膚炎といった直接的な肌トラブルへの警戒です。日本皮膚科学会の接触皮膚炎診療ガイドラインにおいても、化粧品やヘアケア製品に配合される「合成香料」はアレルゲン(アレルギー原因物質)の上位に挙げられています。頭皮が赤くなる、洗髪後にかゆみが生じるといった症状を抱える敏感肌の人々にとって、低刺激かつ香料無添加の処方を選ぶことは、頭皮バリア機能を守るための必須防衛策といえます。
さらに、ビジネスシーンにおけるスメルハラスメント防止への配慮や、愛用している香水・ボディクリームの香りを邪魔されたくないというライフスタイル上の合理的な理由から、無香料シャンプーを指名買いするメンズ層も急増しています。