吾峠呼世晴のストーリーテリングの真骨頂は、些細な描写に見える場面へ緻密な伏線を忍ばせる点にある。無惨が長年捜し続けた「青い彼岸花」の謎は、物語終盤で大きな意味を持つが、竈門家の生活環境や日照条件との関わりは非常に示唆的だ。竈門家が日光と深く結びついた「日の呼吸」の使い手である耳飾りの剣士・継国縁壱の意志を継いでいた事実も、彼女の覚醒をあらかじめ決定づけていた。
禰豆子が太陽を克服した瞬間、無惨のターゲットは青い彼岸花の探索から「禰豆子の吸収」へと明確にシフトする。つまり、あの穏やかな再会と歓喜の場面こそが、鬼殺隊と無惨による最終決戦の火蓋を切る合図となったわけだ。一見すると救済の感動シーンでありながら、同時に全滅へのカウントダウンが始まるという二重構造。これこそが本作のプロットが持つ恐ろしいほどの完成度である。