劇場版シリーズ初期の金字塔と名高い本作が、今なおアニメファンの間で絶大な評価を得ている背景には、児童向けアニメの枠組みを大胆に押し広げた骨太な作劇があります。
当時の映画制作陣が挑んだのは、「もしもばいきんまんの悪だくみが完璧に成功し、アンパンマンたちが手も足も出なくなったらどうなるのか」という極限のシチュエーションでした。物語の推進力となっているのは、偶然手に入れた謎の卵から生まれた怪獣メゴラと、故郷の星を復興させようと奮闘するヤーダ姫の存在です。
普段のテレビシリーズで見られる牧歌的な日常は早々に崩壊し、緊迫感あふれる演出と圧倒的なアニメーションクオリティで物語が疾走します。ギャグやコミカルなやり取りを挟みつつも、根底に流れるのは「責任」「献身」、そして「過酷な運命にどう立ち向かうか」という重厚なメッセージ性です。子ども向けと侮って鑑賞した大人が思わず息を呑むほどの完成度こそが、時代を超えて語り継がれる最大の要因といえます。