リアルタイムの視聴率が分散化する現代においても、三谷ドラマが突出した注目を集め続ける背景には、明確な3つの構造的強みがあります。
第1に、役者の魅力を極限まで引き出す「当て書き」の精度です。三谷は当て書き(演じる俳優をあらかじめ想定して脚本を書く手法)の名手であり、役者本人の個性、癖、声のトーンまでも計算してセリフを構築します。『古畑任三郎』における田村正和の唯一無二の佇まいや、『鎌倉殿の13人』における北条義時(小栗旬)のグラデーション豊かな闇落ち描写は、当て書きだからこそ到達できた表現です。
第2に、伏線回収の快感と群像劇の巧みなパズル構造です。登場人物一人ひとりに見せ場と動機があり、無駄なキャラクターが一切存在しません。ネットの反応を見ても、「何気ない第1話のギャグが最終回の悲劇への伏線になっていた」「全員が主人公に見える」といった脚本の構成美に対する称賛が圧倒的多数を占めます。
第3に、悲劇と喜劇を紙一重で反転させるトーンコントロールです。重厚な歴史劇であってもユーモアを忘れず、日常的なコメディの奥底に人間の業や哀愁を忍び込ませる手腕が、幅広い年齢層の視聴者を画面に釘付けにしています。