篠房六郎の代表作として筆頭に挙げられるのが、月刊アフタヌーンで連載された『百舌谷さん逆上する』(全10巻)です。当時サブカルチャー界隈で記号化されていた「ツンデレ」という属性を、重度の対人コミュニケーション不全や強迫的な自尊心の暴走としてリアルに再構築した本作は、読書界に大きな衝撃を与えました。
主人公・百舌谷小枝が感情の昂ぶりから周囲を圧倒し、自己矛盾に苦悩する姿は、単なるコメディの枠を遥かに超越しています。ギャグとシリアスが紙一重で反転する演出、計算し尽くされたコマ割り、そして登場人物たちが抱えるコンプレックスへの容赦ないメス入れは、まさに篠房作品の真骨頂でした。
作品が完結して長い年月が経過した現在でも、「キャラクター表現の歴史を塗り替えた怪作」として語り継がれており、後進のクリエイターたちにも計り知れない影響を与え続けています。