結論から述べると、「親が認知症だからといって、子どもが必ず認知症になるわけではない」というのが現代医学の明確な回答です。認知症の発症機序を正しく理解するには、大きく分けて「家族性(遺伝性)認知症」と「孤発性認知症」の2つの概念を切り分けて考える必要があります。
厚生労働省の研究班や日本神経学会の報告によると、特定の原因遺伝子が親から子へ受け継がれることで発症する家族性認知症の割合は、認知症全体のわずか1%〜5%未満とされています。これらは「常染色体顕性(優性)遺伝」という形式をとり、変異遺伝子を持つ親から子へ50%の確率で受け継がれ、遺伝子を受け継いだ場合は極めて高い確率で発症します。しかし、これは極めて稀なケースです。
一方で、世の中で見られる認知症の95%以上は「孤発性(こはつせい)」と呼ばれるタイプです。孤発性認知症は、単一の遺伝子変異によって引き起こされるものではなく、加齢、生活習慣(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)、運動不足、喫煙、社会的孤立、そして複数の「疾患感受性遺伝子(発症リスクにわずかに関与する遺伝的素因)」が複雑に絡み合って発症します。
つまり、親が認知症を発症したとしても、それは「遺伝病を受け継いだ」のではなく、「加齢や生活習慣の積み重ねによって発症した孤発性認知症を間近で見た」ケースが圧倒的多数を占めているのが実情です。