エスプレッソと一般的なペーパードリップコーヒーは、同じコーヒー豆を原料としながらも、まったく異なる物理現象を利用して液体を抽出しています。ドリップが重力に任せて湯を透過させ、水溶性成分を穏やかに引き出すのに対し、エスプレッソは機械の力で強力な圧力をかけ、豆の細胞壁を突き破って油脂分や香気成分を瞬時に絞り取ります。
表を見ると明らかなように、エスプレッソとドリップコーヒーの違いは濃度だけではありません。「カフェインが強烈で夜眠れなくなる」という俗説がありますが、全日本コーヒー協会や欧州食品安全機関(EFSA)の公表データを照合すると、1杯あたりのカフェイン量はエスプレッソの方が格段に低い数値を示します。カフェインは湯と豆が接触している時間が長いほど多く抽出される性質があるため、30秒足らずで抽出を完了させるエスプレッソは、むしろ身体への刺激物移行を抑えた極めて理にかなった抽出手法なのです。
カフェで注文する際は、基本となる1杯分(約30ml)を指す「ソロ(シングル)」と、粉量と抽出量を2倍にした「ダブル(ドッピオ)」が存在します。エスプレッソソロとダブルの違いは単なる量だけでなく、抽出される香りの広がりやボディ感の厚みにも影響するため、まずはソロで一口の衝撃を味わい、慣れてきたらダブルでより立体的な風味を堪能するのが王道のステップです。