コナン映画における黒の組織を読み解く上で、避けて通れないのが「原作本編(正史)との厳密な連動性」です。映画オリジナルの事件を描きつつも、黒の組織の設定に関しては原作者・青山剛昌氏による極めて厳格なプロットチェックが行われています。
その筆頭が、黒の組織のボスである「あの方」こと大富豪・烏丸蓮耶の存在です。作中では長らく謎に包まれていた組織の首魁ですが、映画においてもその巨大な影は常に漂っています。組織が半世紀前から推し進めている極秘プロジェクトと、宮野夫妻および灰原哀が開発した「APTX4869」。不老不死や若返り、あるいは「時の流れを逆行させる」ことを目論んでいるとされる組織の思惑が、劇中の最新ハイテク施設(パシフィック・ブイなど)を狙う動機と密接に結びついています。
また、中核を担う幹部陣のキャラクター造形と力関係も、物語に重層的な深みを与えています。
【幹部陣の構図とそれぞれの思惑】
- ジン:ボスの命令を冷酷無比に実行する執行者。「疑わしきは罰する」信条を持ち、少しでも裏切りの気配を見せた者は仲間であっても即座に銃口を向ける。工藤新一の生存に気づいていない点が最大の盲点。
- ウォッカ:ジンの忠実な片腕。機械操作や現場の実務を担当し、『黒鉄の魚影』では潜水艦の内部構造や魚雷発射プロ命の解説など、実務者としての優秀さが改めて描かれた。
- ベルモット:ボス直属のお気に入りで、秘密主義を貫く謎多き女性。「A secret makes a woman woman」を信条とし、工藤新一を「シルバーブレット」、毛利蘭を「エンジェル」と呼び、組織から彼らを密かに守ろうとする単独行動が映画の鍵を握る。
- バーボン(安室透):日本の公安警察(警察庁警備局警備企画課「ゼロ」の降谷零)から潜入しているスパイ(NOC)。組織内での地位を維持しつつ、コナンと水面下で連携して最悪の事態を防ぐ綱渡りの諜報戦を展開。
特に『黒鉄の魚影』においては、組織のナンバー2である「ラム」が本格的に映画の背後に君臨し、フサエブランドのブローチを巡るベルモットの独自の思惑が描かれるなど、原作の最新展開と完全にリンクした伏線回収が行われました。劇場版はもはやパラレルワールドではなく、原作の謎を補完し先導する重要なメディアミックスの主戦場となっているのです。