ネット上の情報やコミュニティでは、「ディスクレパンシーが15以上あると発達障害が確定する」「FSIQが85以上なら通常学級で問題ない」といった言説が散見されます。しかし、臨床心理学および児童精神医学の観点において、これらは誤解です。
WISC-Vはあくまで認知機能のプロファイル(得意・不得意の傾向)を客観測定するツールであり、診断書そのものではありません。DSM-5(米国精神医学会の診断基準)における発達障害(ASD:自閉スペクトラム症、ADHD:注意欠如・多動症、SLD:限局性学習症)の診断は、生育歴、行動観察、学校や家庭での適応状態、問診などを総合して医師が判断します。
典型的な認知パターンの傾向として、ADHD特性を持つ児童は「ワーキングメモリ(WMI)」や「処理速度(PSI)」が他指標より低く出やすい傾向があり、ASD特性を持つ児童は「言語理解(VCI)」と「処理速度(PSI)」の間、あるいは「視空間(VSI)」と「言語理解(VCI)」の間に激しい凹凸を示すケースが多く報告されています。しかし、指標の差の大きさだけで一律に診断を下すことはできません。