木久扇の後任を巡っては、発表直前までメディア各社で激しい予想合戦が繰り広げられました。当時、ネット上や芸能マスコミの間で有力視されていた「笑点新メンバー候補」には、以下のような顔ぶれが並んでいました。
第一候補として連日報じられたのが、女性落語家として初の真打昇進を果たし華のある高座で人気を博す蝶花楼桃花でした。番組に新しい風を吹き込む「初の女性レギュラー誕生か」とお茶の間の期待値は最高潮に達していました。さらに、二つ目時代から『成金』で頭角を現した春風亭昇々、木久扇の実子である二代目林家木久蔵、歯に衣着せぬ毒舌で知名度抜群の立川志らくなども候補として名前が浮上していました。
そうした下馬評を覆し、晴の輔が抜擢された背景には制作陣が掲げた明確な「チームビルディングの力学」がありました。当時の制作プロデューサー周辺を取材した情報によると、前年(2023年)に落語界きっての爆発的な人気とチケット即完売を誇る春風亭一之輔、前々年(2022年)には圧倒的な手数とテンションで場をかき回す桂宮治という「劇薬級の主役候補」を立て続けに投入していたことが影響しています。
ここにさらに強い個性を投入すれば、春風亭昇太が司会を務める大喜利の調和が崩壊しかねません。求められたのは、強烈な自我を前面に出すプレーヤーではなく、一歩引いて状況を俯瞰し、的確なワードセンスで拾い上げる「バランサー」でした。晴の輔はBS日テレ『笑点 特大号』の若手大喜利で長年培った確かな対応力があり、誰の回答も殺さずに活かす職人技が高く評価されたのです。