一般に「膝の水」と呼ばれるものの医学的正体は、関節内を満たしている「関節液(滑液)」です。通常、健常な膝関節の中にも1〜3ミリリットル程度のわずかな関節液が存在し、軟骨への栄養補給や関節のスムーズな動きを助ける潤滑油の役割を果たしています。
関節内部で軟骨の摩耗や靭帯の損傷、あるいは過剰な負荷によって炎症が生じると、防衛反応として滑膜(かつまく)から関節液が過剰に分泌されます。これが関節包という袋の中に異常に貯留した状態が、医学用語で「関節水腫」と呼ばれる病態です。
整形外科の臨床現場において、医師は穿刺(せんし)で抜き取った関節液の性状から原因疾患を推測します。通常はほぼ無色透明ですが、炎症性の関節水腫では「透明度の低い濁った黄色」へと変化します。さらに半月板損傷や骨折、靭帯断裂を伴う外傷では血液が混じって赤褐色になり、痛風や偽痛風、細菌感染による化膿性関節炎では白く濁った膿汁状になるなど、関節液の濁りや色は関節内部の危険度を雄弁に物語る指標です。