ネット上の不動産コミュニティやQ&Aサイトには、公図にまつわる危険な誤解が蔓延しています。
最大の誤解は、「法務局の公図に境界線が入っているのだから、境界確定などわざわざ高い金を払って行う必要はない」という主張です。しかし、公図上の線はあくまで登記上の区画を示す「筆界(ひつかい)」の推定資料に過ぎず、現地に境界標石が打ち込まれていなければ、法的な所有権の境目(所有権界)と一致している保証はどこにもありません。
もし隣接地との境界線に争いが生じた場合、解決手段として以下の2つの制度を正しく理解しておく必要があります。
一つは、民間手続きである「土地家屋調査士による境界確定測量」です。隣地所有者全員と現地で立会い、過去の図面や現況物をもとに合意を形成し、境界確認書(筆界確認書)に実印を押印・印鑑証明書を添付して境界標を設置します。費用は一般的な住宅地で30万〜80万円程度かかりますが、不動産売却時には事実上必須の手続きです。
もう一つが、法務局の公的制度である「筆界特定制度(ひっかいとくていせいど)」です。隣人が立会いを拒否したり行方不明であったりして合意形成が不可能な場合、法務局の筆界特定登記官が外部専門家(土地家屋調査士など)の意見を聴取した上で、現地の境界(筆界)の位置を公権力をもって特定します。裁判(境界確定訴訟)を起こすよりも安価かつ短期間で一定の結論を得られるため、利用件数は年々増加しています。
【プロの結論】自分で調べるべき人・専門家に即座に委ねるべき人の判断基準
公図の取得や境界調査において、「自分でWebから取得して判断して良いケース」と「即座に土地家屋調査士などのプロに依頼すべきケース」の境界線は明確です。
【自分で公図を閲覧・確認するだけで十分な人】
- 実家や自宅の敷地が「およそどのような形状をしているか」をざっくり把握したい人
- 新築やリフォームの初期構想段階で、隣接地の地番や所有関係を予備調査したい人
- 既に14条地図や近年(平成17年以降)の地積測量図が法務局に完備されている新興住宅地に住んでいる人
【公図だけで判断せず、即座に土地家屋調査士へ相談すべき人】
- 公図の図面と現地のブロック塀・擁壁の配置が素人目に見ても明らかに異なっている人
- 土地の売買契約、または金融機関からの融資(住宅ローン・アパートローン)を控えている人
- 親から相続した土地の境界標が現地に1本も見当たらず、隣人との関係性に不安がある人
- 法務局の図面が「地図に準ずる図面(旧公図)」のままで、地積測量図が存在しない古い市街地や農地を所有している人