2022年1月31日、積丹町内外に激震が走りました。積丹町営の温泉保養センターとして長年親しまれてきた「岬の湯しゃこたん」が、利用客の減少や燃料高騰、建物の老朽化に伴う維持管理費の増大を理由に突如営業を終了したのです。公営時代の累積赤字は年間約1,500万円規模に達しており、人口2,000人を割り込む過疎化が進む自治体財政にとって、これ以上の公費投入は限界という冷徹な行政判断でした。
当時、地元住民の間では「地域の憩いの場であり、観光の生命線でもある温泉を失えば町は完全に衰退する」という強い危機感が渦巻きました。そこで立ち上がったのが、地元積丹の未来を創るべく設立されたまちづくり会社「株式会社SHAKOTAN GO」でした。代表の佐藤慶輔氏を中心としたチームは、行政からの補助金頼みから脱却し、完全民間主導による自立型ビジネスモデルへの転換を積丹町へ提案。町の公募プロポーザルを経て無償譲渡を受け、わずか数カ月の準備期間を経て2022年4月に見事な営業再開を実現させました。
行政が匙を投げた赤字施設を、いかにして持続可能な拠点へと蘇らせたのか。その原動力は、温泉を「ただ湯に浸かる場所」から「積丹の豊かな自然とカルチャーを五感で味わう滞在型デスティネーション」へと大胆に再定義した事業構想力にありました。