「探せ ダイヤモンドリリー」の評価を不動のものにした大きな要因が、三石直和監督がメガホンを取ったドラマ仕立ての長編ミュージックビデオ(MV)です。YouTube等で公開されたドラマパートを含む完全版は11分40秒にも及び、アイドルのMVという枠組みを遥かに超えた短編青春映画としての完成度を誇ります。
MVの舞台は、どこか浮世離れした空気が漂う全寮制の女子校。物語は、突如として転校(旅立ち)が決まった佐々木舞香と、その事実を受け止めきれない髙松瞳を中心に展開します。劇中では生徒たちの間で大切なブローチが紛失する騒動が勃発。疑心暗鬼が渦巻くなか、髙松は舞香の部屋へ駆け込みますが、そこにはすでに誰もいません。机の上に残されたのは、花言葉のメッセージが添えられたダイヤモンドリリーのモチーフでした。
ネット上では当時、「盗難事件の犯人は誰だったのか」「なぜ舞香は何も言わずに去ったのか」という議論が巻き起こりました。しかし、演出の意図を詳細に分析すると、ブローチの紛失は思春期の少女たちを取り巻く「閉じた世界の動揺」を可視化するためのマクガフィン(物語を動かす動機)に過ぎないことが分かります。本質は、友情とも初恋ともつかない巨大な感情のやり場を失った瞳が、なりふり構わず駅へと疾走するクライマックスに集約されています。
撮影ロケーションとして選ばれたのは、数々の映像作品の舞台となってきた栃木県足利市の「旧足利西高校」や、わたらせ渓谷鐵道沿線の風情ある駅舎です。昭和から平成の残り香を感じさせる木造駅舎と踏切の警報音、茜色の夕景が、二度と戻らない時間の不可逆性を容赦なく際立たせています。キャストとして出演した12人(当時)のメンバー全員が、台詞の少ない目線の揺らぎや息遣いで見せた演技は、今なおファンの間で語り草となっています。