視聴者の記憶を大きく揺さぶる契機となったのが、2013年10月2日にテレビ東京系列で放送された単発スペシャルアニメ『ポケットモンスター ジ・オリジン』(THE ORIGIN)です。
本作は、1996年に発売された初代ゲームボーイ用ソフト『ポケットモンスター 赤・緑』の世界観を忠実にアニメ化した作品であり、テレビシリーズとは完全に独立した世界線として制作されました。この作品の主人公である「レッド」役に抜擢されたのが、竹内順子さんでした。
テレビアニメの「サトシ」は、ゲームの「レッド」を原案として生み出されたキャラクターです。赤い帽子、青いベスト風のシャツ、相棒としてのヒトカゲやピカチュウとの絆など、ビジュアルや旅の動機には強い共通項が存在します。『ジ・オリジン』をリアルタイムや配信で目にしたライト層の視聴者が、「ポケモンの赤い帽子の少年=サトシ」と無意識に同一視し、その声を演じた竹内順子さんの熱演が「サトシの声」として脳内にインプットされてしまった経緯があります。
当時の制作発表やインタビュー資料を紐解くと、竹内さんはゲーム版のストイックかつ素朴な少年像を的確に捉え、松本さんが演じるテレビ版サトシの破天荒な明るさとは一線を画す、実直な冒険者としてのレッドを見事に表現していました。この演技クオリティの高さが仇となり、皮肉にも「サトシを演じていた記憶」へとすり替わって語り継がれる要因となったのです。