デスク上の数字だけでなく、現場で何が起きているのか。神奈川の水瓶である相模原市緑区の津久井湖周辺および愛甲郡清川村の宮ヶ瀬ダム周辺を実際に取材すると、データシートには表れない実態が浮かび上がります。
宮ヶ瀬ダム周辺の飲食店関係者は、現場の水位景観と世間のリアクションのギャップについて次のように語ります。
「冬から春先にかけて水位が下がると、古い橋脚や沈んだ集落の遺構が一部見え隠れすることがあります。観光客の方から『こんなに干からびて大丈夫なの?』と心配の声をいただくのですが、これは春の雪解けや梅雨の出水に備えて意図的に調整している放水なんです。地元の人間からすると毎年の見慣れた光景ですが、写真だけ切り取られてSNSで騒がれると風評被害に近い戸惑いを感じます」
一方、5ちゃんねるや地域掲示板、X(旧Twitter)上では、降雨がない日が2週間続いただけで「神奈川の水道が危ない」「風呂の水を溜めておくべきか」といった過剰反応の書き込みが散見されます。しかし、現場の管理事務所に確認すると、宮ヶ瀬ダム貯水率は100%近くを保ち続けること自体が逆に危険であり、豪雨時の洪水調節スペースを確保するための計画的水位低下(予備放流)が行われているに過ぎません。現場の視座を持たないまま表層的な水位低下を「渇水の証拠」と誤認してしまうケースが後を絶たないのが実情です。