鬼女化のファーストステップが「生成(なまなり)」です。「生(なま)のまま成りかけている」、すなわち「まだ完全な鬼になりきれていない状態」を指します。
面の特徴を見ると、額の生え際あたりに小さな2本の角の芽が生え始めています。しかし、顔つき自体は眉をひそめた美しい人間の女性の面影を色濃く残しており、髪も乱れてはいるものの結い髪の形を辛うじて留めています。代表的な演目である『鉄輪(かなわ)』では、夫に捨てられた妻が貴船神社に丑の刻参りを行い、生きながらにして鬼へと変貌していく姿が描かれます。
生成の最大の魅力は、その「中途半端な人間性」にあります。激しい恨みに身を焦がしながらも、かつて愛した人への未練や、自らが鬼へと堕ちていくことへの恐怖・悲しみが拭いきれていません。狂気と良心の狭間で揺れ動く痛々しい姿こそが、生成という面が持つ真の怖さであり、哀愁なのです。