本作を語る上で欠かせないのが、テレビドラマ『青い鳥』『眠れる森』や映画『破線のマリス』などを手掛け、日本のドラマ界・ミステリー界の頂点に君臨していた脚本家・野沢尚氏の存在です。原作者・青山剛昌氏からのラブコールによって実現したこのタッグは、ファミリー向けアニメに鋭利なメスを入れることとなりました。
劇中序盤、政財界の重鎮や高級官僚、警察幹部の子息たちが集うパーティー会場で、灰原哀は彼らを冷徹に見つめながら次のように語ります。
「政治家の息子は政治家に、医者の息子は医者になる……そうやって世襲が続く限り、日本の悪しき体質は変わらない。日本のリセットが必要なのよ」
このセリフに象徴されるように、野沢氏が描いたのは単なるゲームの暴走ではありません。敷かれたレールの上で傲慢に振る舞う2世・3世の特権階級の子供たちと、過熱する受験戦争や英才教育によって精神的に追い詰められる若者の実態でした。当時、日本の閉塞感を鋭く突いたこのメッセージは、格差固定化が叫ばれる現在において、より一層生々しいリアリティを持って胸に迫ります。
しかし、野沢脚本の真骨頂は「批判」で終わらない点です。絶望的なデスゲームを通じて、甘やかされて育った子供たちが他者のために自己犠牲を払い、仲間を信じる心を獲得していく――。子供たちの「魂の成長」を描くことで、未来への希望を力強く提示してみせました。