前田妃奈の名を世界に轟かせた最大の契機が、2022年10月にポーランド・ポズナンで開催された「第16回ヘンリク・ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクール」です。1935年に創設された同コンクールは、若手ヴァイオリニストにとって最高峰の登竜門のひとつとして知られています。
予選から本選に至るまで、前田妃奈が見せたパフォーマンスは審査員と現地の聴衆を完全に圧倒しました。難曲として知られるヴィエニャフスキの協奏曲やブラームスのソナタにおいて、彼女は全身を使って音楽と一体化し、劇的なダイナミクスと繊細なピアニッシモを自在に行き来する演奏を披露。結果として第1位(優勝)を獲得しただけでなく、ヴィエニャフスキ・コンチェルト賞、カプリス賞、ソナタ賞、オーケストラ賞など、主要な特別賞を独占する圧勝劇を演じました。
当時の現地報道や音楽ジャーナルの劇評では、「彼女の弓からは楽譜の枠を超えた生命の叫びが聴こえる」「計算された巧さではなく、音楽そのものへの愛が溢れ出ている」と最大級の賛辞が送られました。