本作の鑑賞者の間で最も激しい議論と驚きを呼んだのは、「一新された豪華声優陣が見せた奇跡的な説得力」と「原作からの大胆なエピソードの凝縮」という二つの核心でした。
1970年代のテレビアニメ版では、オスカル役を田島令子氏、マリー・アントワネット役を上田みゆき氏が演じ、その端正で古典劇のような格調高い声のトーンが長年にわたりファンの脳裏に刻み込まれていました。そのため、今回のキャスト交代が発表された際、ネット上には「前作のイメージを壊さないでほしい」という不安の声が少なからず存在していました。しかし、実際に劇場で放たれたオスカル役・沢城みゆき氏の演技は、軍人としての冷徹な気品、男装の奥底に秘めた女性としての繊細な揺らぎ、そして理不尽な抑圧に抗う激情を完璧に体現していました。試写会直後から映画ライターや関係者の間でも「沢城オスカルの凛とした声の響きは、旧作への最大限の敬意と新時代の息吹が共存している」と絶賛が相次ぎました。
一方、マリー・アントワネットを演じた平野綾氏の熱演も観客を驚嘆させました。ミュージカルの舞台で培われた抜群の発声と感情の起伏を活かし、世間知らずの無邪気な少女が王妃としての自覚に目覚め、やがて断頭台へと向かう気高き母・女性へと変貌を遂げるグラデーションを熱演しました。さらに、幼馴染としてオスカルの影となり続けたアンドレ役の豊永利行氏、許されぬ恋に身を焦がすフェルゼン役の加藤和樹氏という実力派陣の重厚なアンサンブルが重なり、「声優陣の評判」は懸念から一転、本作最大の絶賛ポイントへと昇華しました。
そしてもう一つの驚きの要因が、「原作漫画と劇場アニメの違い」です。原作の全10巻に及ぶ濃密な歴史絵巻を約2時間の映画枠に収めるにあたり、制作陣は王室スキャンダルである「首飾り事件」や下層民衆の細かな暴動、サブキャラクターたちの群像劇を大胆に刈り込みました。その代わり、「オスカルとアントワネットという、過酷な宿命を背負った二人の女性の対比と魂の交差」へと焦点を極限まで絞り込んだのです。このシャープな作劇方針こそが、初見の観客にも物語の骨格を鮮明に伝えつつ、原作を熟知するファンに「こう来たか!」という驚きをもたらした本質的な理由です。